インフルエンザ
インフルエンザは主にA型・B型があり、主に冬に流行する急性熱性感染症です。感染後1~3日の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱、頭痛、全身倦怠感などが突然現れ、咳や鼻水、のどの痛みが続きます。通常1週間ほどで回復しますが、肺炎や脳症などの合併症を引き起こすことがあります。流行が始まると感染が急速に広がります。診断は発熱などの症状、のどの所見、流行の有無、迅速抗原検査などを用いて行いますが、検査が陽性になるには発熱(37.5度以上)から12~24時間ほど時間を要するため、発熱してすぐの受診では診断がつかない場合があります。学校感染症に指定され、発症後5日・解熱後2~3日は登校・登園が禁止されています。
RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は、乳幼児に多く見られる呼吸器感染症で、咳や鼻水、発熱などの症状が現れます。特に生後6か月未満のお子さまや早産児では重症化しやすく、喘息に近い症状や、多量の鼻汁で哺乳ができないなどの症状を引き起こすことがあります。感染力が強く、保育園や家庭内で広がることが多いため、手洗いや消毒を徹底することが予防に重要です。症状が進行し、呼吸が苦しそうな場合や飲食が難しい場合は、早めに受診してください。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、主に学童期のお子さまに多く見られる呼吸器感染症です。初期症状は、発熱や咳、喉の痛みなど風邪に似ていますが、咳や発熱が長引くことが特徴です。咳が悪化すると夜間に強く出て、睡眠が障害されることもあります。症状が続く場合や悪化する場合には抗菌薬による治療が必要です。感染力があるため、学校や家庭での感染予防が重要です。
溶連菌感染症
A群溶血性連鎖球菌という細菌が原因で、主に咽頭炎を起こす感染症です。子どもの感染症の中で、抗生物質による治療が必要となる数少ない疾患の一つです。発熱や強い喉の痛みに加え、吐き気を伴うこともあります。体の中心部に細かい発疹が現れ、痒みを伴う場合も多いです。喉が真っ赤になることがあり、舌がいちごのように赤くなるのも特徴的です。診断には迅速検査キットを使用します。また、リウマチ熱や糸球体腎炎といった合併症を予防するため、抗生物質は医師の指示通り最後まできちんと飲み切ることが重要です。
百日咳
百日咳菌が原因となる急性呼吸器感染症です。特徴的な咳は「コンコンコン・ヒュー」という発作的なもので、特に乳児では息止め発作を引き起こすことがあります。特徴的な咳がなくても、2週間~1ヶ月以上の慢性的な咳で診断に至る場合もあります。予防には、生後2か月から始める五種混合ワクチンの接種が重要です。また、学童期になると予防効果が低下し、感染が増加することが分かっているため、就学前に三種混合ワクチンを追加接種することが日本小児科学会によって推奨されています。
ヒトメタニューモウイルス感染症
ヒトメタニューモウイルス感染症は、乳幼児から学童期のお子さまに多く見られる呼吸器感染症です。症状は咳、鼻水、発熱、喉の痛みなど風邪に似たものが多いですが、重症化すると気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。特に乳児や基礎疾患のあるお子さまでは注意が必要です。感染力が高く、飛沫感染や接触感染を通じて広がります。手洗いや消毒を徹底し、予防に努めることが大切です。症状が悪化した場合や呼吸が苦しそうな場合は早めに受診してください。
麻疹(はしか)
麻疹ウイルスによる感染症で、非常に感染力が高い病気です。空気感染、飛沫感染、接触感染を通じて、鼻やのどから体内に侵入します。肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こすこともあります。感染後10~12日の潜伏期間を経て、風邪のような症状が現れ、一旦解熱したように見えた後、再び発熱し、発疹が出るのが特徴です。麻疹の特効薬はありませんが、MRワクチンで予防が可能です。1歳を迎えたらできるだけ早く1回目を接種し、小学校入学前の1年間で2回目の接種を受けましょう。2回の接種でしっかりと予防効果が期待できます。
風疹
風疹ウイルスが原因の感染症で、発熱、全身の発疹、頸部や耳の後ろのリンパ節の腫れが主な症状です。発熱は軽度な場合も多く、気づかれないことがあります。特に妊娠初期の女性が風疹にかかると、生まれつき難聴、白内障、心臓病、精神運動発達遅滞などを持つ先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが生まれることがあります。そのため、風疹は社会全体で予防する必要がある感染症です。治療法はありませんが、MRワクチンで予防が可能です。
突発性発疹
ヒトヘルペスウイルス6・7による感染症で、2歳までにほとんどの人がかかります。突然の高熱で発症しますが、発熱以外の症状があまり目立たないのが特徴です。解熱後に全身に紅斑が現れます。紅斑はかゆみや痛みを伴わず、この時期は不機嫌や下痢を伴うこともあります。一般的に1週間ほどで自然治癒しますが、発熱してすぐに熱性けいれんや脳症を引き起こすことがあります。発熱している間は他の症状が目立たないことが多く、他の感染症と区別がつきにくいため、経過を慎重に見守ることが大切です。
水痘(水ぼうそう)
水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、水ぼうそうや帯状疱疹の人から感染します。約2週間の潜伏期間後、37~38℃の発熱とともに水疱を伴う発疹が全身に広がり、強いかゆみを伴います。水疱内の液に感染性があり、水疱が全て痂皮化して乾くまで登校、登園は不可となります。抗ウイルス薬を使用することもありますが、予防や軽症化にはワクチン接種が重要です。1歳を過ぎたら水痘ワクチンを接種し、3か月以上間隔を空けて2回目を接種すると予防効果が高まります。ワクチンは3歳までに完了し、適切な予防で感染を防ぎましょう。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
ムンプスウイルスによる感染症で、耳下腺や顎下腺の腫れと痛みが特徴です。酸っぱい食べ物で痛みが増し、3~6歳に多く、冬から初夏に流行しやすいです。潜伏期間は2~3週間で、不顕性感染もあります。診断には接触歴や血液検査が必要ですが、他の耳下腺炎との鑑別が重要です。特効薬はなく、発熱や痛みに対処しながら自然治癒を待ちます。まれに無菌性髄膜炎や難聴などの合併症が発生するため注意が必要です。ワクチン接種が最も効果的な予防策です。
手足口病
コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症で、手のひら、足の裏、口の中、おしりに発疹ができるのが特徴です。生後6か月~5歳頃の乳幼児に多く、夏に流行します。初期に発熱を伴い、口の痛みで食事が取りづらくなることもあります。発疹は1週間ほどで治りますが、爪が割れたり指の皮がむけたりすることもあります。特効薬はなく、脱水予防が重要です。
ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルスによる感染症で、主に乳幼児に見られ、夏に流行します。38~40℃の高熱が2~3日続き、のどの奥に小さな水疱(水ぶくれ)ができるのが特徴です。口内炎や痛みにより食事や水分摂取が難しく、脱水症状を引き起こすこともあります。熱は2~3日で下がり、水疱も1週間ほどで治ります。特効薬はなく、のどに優しい食事や飲み物で脱水を防ぐことが重要です。
アデノウイルス感染症(プール熱)
アデノウイルスによる感染症で、咽頭炎、結膜炎、扁桃炎が主な症状です。急な高熱で始まり、40℃近くまで上がることもあります。発熱は5~7日続き、昼間に下がっても夕方に再び上がることがあります。目の充血や目やにを伴う結膜炎症状を引き起こすこともあります。夏季にプールで感染が広がることも多かったため、「プール熱」とも呼ばれます。特効薬はなく、対症療法が中心です。
とびひ(伝染性膿痂疹)
乳幼児や学童に多い細菌感染症で、初夏から夏に発症しやすいです。虫刺されや湿疹を掻き壊した部分に細菌が感染し、水疱(水ぶくれ)や赤み、ただれが現れます。強いかゆみがあり、掻いた手で触れることで全身に広がるため「とびひ」と呼ばれます。治療には抗菌薬入りの軟膏を使用し、広がる場合は抗生物質を服用します。皮膚を清潔に保ち、シャワーをこまめに浴び、患部を掻かないよう注意しましょう。感染を防ぐため、タオルや衣類の共用は避け、早めに治療を受けてください。
急性胃腸炎
主にノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが原因で、細菌性の場合もあります。発熱、嘔吐、下痢、腹痛が主な症状で、特に嘔吐が続くと脱水のリスクが高まります。進行すると点滴治療が必要になることもあります。ウイルスは手や食べ物を介して感染しやすく、冬に幼稚園や学校で流行し、家庭内感染も多いです。治療は水分補給が中心で、細菌性腸炎の場合は抗生物質を内服してもらう場合もあります。適切なケアで回復しますので、気になる場合はご相談ください。