百日咳の流行にご注意を|症状・経過・予防接種のポイント

百日咳(ひゃくにちぜき)とは?
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染症で、特有の咳が長く続くことが特徴です。
子どもに多い病気ですが、大人がかかることもあります。特に5種混合ワクチン(百日咳ワクチンが含まれています)を接種していない生後2か月未満の赤ちゃんは重症化しやすく、注意が必要です。飛沫感染で広がるため、家庭内や保育園、学校などで感染が広がりやすいのも特徴です。
2025年春、百日咳の報告が増えています
国立感染症研究所の報告によると、それまで低い水準で推移していた患者報告数が2024年から増加傾向に転じています。2025年第12週(3月中旬)時点の累計報告数は4,200例以上で、2018年以降では最多レベルとなっています。ワクチンによる予防が広がっている一方で、免疫の減弱や接種間隔の空きなどが影響している可能性も指摘されています。
百日咳の主な症状
百日咳は、「百日も咳が続く」と言われるほど長引く強い咳が特徴の感染症です。特にワクチン接種がまだ進んでいない乳児がかかると、重症化することもあるため注意が必要です。
症状は進行段階によって変化します。
・初期(カタル期:約1〜2週間)
鼻水やくしゃみ、軽い咳、微熱など、風邪に似た症状が続きます。まだ百日咳とは気づきにくい時期です。
・中期(痙咳期:約2〜3週間)
発作のような激しい咳が繰り返され、咳き込んだ後に「ヒュー」と笛のような音を立てて息を吸う呼吸が見られることがあります。咳の反動で嘔吐したり、眠れないほど咳が続くこともあります。
・回復期(2〜3週間以上)
咳の回数や強さが徐々に落ち着いてきますが、咳だけが長く残ることもあり、全体として1か月以上続くケースも少なくありません。
特に乳児期のお子さんでは、咳そのものがあまり目立たず、無呼吸や顔色が悪くなるといった症状が先に現れることもあります。小学生以上では、典型的な咳が出ないこともあり、咳が1〜2週間以上続く場合は、流行状況によって百日咳の可能性を考えることがあります。
百日咳はどうやって予防するの?
百日咳を予防するうえで、もっとも基本となるのが定期接種の5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ・インフルエンザ菌b型)です。日本では、生後2か月から複数回に分けて接種が行われており、乳幼児期の重症化予防に大きく役立っています。ただし、ワクチンによって得られる免疫は年齢とともに少しずつ低下していくとされており、年長児(就学前)や思春期以降に再び感染するケースもみられます。
そのため、以下のような対策も大切です。
・5歳以上7歳未満の年長児で三種混合ワクチン(DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風)の自費での追加接種を検討する(他の予防接種と同時接種が可能です)
・家族に咳が長引く人がいる場合は、赤ちゃんへの接触を避けるよう注意する
・予防接種のスケジュールに遅れがないか定期的に確認する
・日常的な咳エチケット(マスク・手洗い)を意識する
なお、11〜12歳で受ける二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風)を、希望に応じて三種混合ワクチンに切り替えることも可能です。ただし、この場合は任意接種(自費)となるため、費用や接種時期については医師にご相談ください。当院では、百日咳を含む各種予防接種に対応しております。接種のタイミングやご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
気になる咳が続くときは、早めの受診を
「風邪だと思っていたら咳だけずっと治らない」「夜中の咳がひどい」「赤ちゃんの顔色が悪くなる」など、気になる症状がある場合は早めのご相談をおすすめします。百日咳は、早期診断と治療(抗菌薬投与)で拡大を防げる病気です。周囲への感染を防ぐ意味でも、早めの対応が大切です。
当院での対応について
当院では、百日咳を含む各種予防接種、乳幼児健診に対応しています。感染予防の観点から、予防接種専用時間(火・金 14:00~15:00)をご用意しております。予防接種の予約は、インフルエンザ以外すべて専用ダイヤル(070-9017-7250)から承っております。咳が長引いている、子どもの様子が気になるといった場合は、どうぞお気軽にご相談ください。