RSウイルス感染症の概要と症状|赤ちゃんに多い呼吸器感染症に注意
「赤ちゃんの咳が長引いている」
「ゼーゼーして苦しそう」
といったご相談は、RSウイルス感染症の時期に限らず、年間を通じてよくいただきます。
札幌市厚別区の小児科「大谷地のびやか子どもクリニック」院長の藤本隆憲です。当院では、発熱や咳、下痢や嘔吐など、お子さんの体調の変化について、どんな些細なことでもお気軽にご相談いただけます。
今回は、乳幼児で重症化することもある「RSウイルス感染症」について、保護者の方に知っていただきたいポイントをわかりやすくご紹介します。
RSウイルスとはどんな病気?
RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、RSウイルスによって起こる呼吸器の感染症です。
日本を含め世界中に広く分布しており、生後1歳までに半数以上、2歳までにほとんどの子どもが一度は感染すると言われています。
症状は軽い風邪のようなものから、重い肺炎まで幅広く、特に初めての感染や生後6か月以内の赤ちゃんでは重症化しやすいことが知られています。
RSウイルスの主な症状
RSウイルスの潜伏期間は通常2〜8日(典型的には4〜6日)です。
初期には次のような風邪に似た症状が見られます。
・発熱(37〜38℃程度のことが多い)
・鼻水
・咳
多くは数日で自然に回復しますが、乳幼児では下記のような症状に進行することがあります。
・喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)
・呼吸困難(咳やゼーゼーで眠れない、苦しくて起き上がる)
・中耳炎の合併(特に1歳未満でよく見られます)
子どもに多い理由
RSウイルスが特に乳幼児で多いのは、免疫がまだ十分に発達していないからです。
母体からの免疫を受け継いでいても、生後数週間〜数か月の間は最も重症化しやすい時期。小さなお子さんはウイルスと戦う力が弱く、肺の奥の「細気管支」に炎症を起こしやすいため注意が必要です。
感染経路と潜伏期間
飛沫感染
咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことで感染します。
接触感染
おもちゃ・手などについたウイルスが口や鼻に入ることで感染します。
空気感染はしないと考えられていますが、感染力は非常に強力です。潜伏期間は2〜8日。症状が出る前後も含めて、1〜3週間ほど感染力を持つとされています。
重症化のサインと受診の目安
ほとんどは軽症で治りますが、症状が軽い場合でも周囲の流行など疑わしい症状があればお気軽にご相談ください。また、次のような症状がある場合はすぐに小児科受診を検討してください。
・呼吸が苦しそう、ゼーゼー・ヒューヒューが強い
・陥没呼吸(あばらや喉の下がへこむ)
・無呼吸発作(呼吸が止まる、特に新生児期は注意)
・顔色が悪い、唇が紫色(チアノーゼ)
・ミルクや水分が摂れない、哺乳力が落ちている
・ぐったりして機嫌が悪い
夜間・休日で迷う場合は、子ども医療電話相談「#8000」もご活用ください。
診断と治療について
RSウイルスには、残念ながら特効薬はありません。治療は「対症療法(症状を和らげる治療)」が中心です。
・痰切りや咳止めなどのお薬
・場合によって喘息などのアレルギーを抑えるお薬
抗生物質は効果がなく、重症の場合は入院管理が必要となることもあります。
予防のためにできること
RSウイルスは非常に感染力が強いため、家庭でできる予防が大切です。
・こまめな手洗い・手指消毒
・咳や鼻水がある場合はマスク着用(できる年齢から)
・生後6か月未満の赤ちゃんは人混みを避ける
・受動喫煙を避ける
・おもちゃやドアノブなどを清潔に保つ
・風邪症状のある兄弟や大人との接触をなるべく避ける
重症化リスクが高い赤ちゃんの予防策
パリビズマブ(シナジス)やベイフォータスなどの予防薬(モノクローナル抗体製剤)。妊婦さんや高齢者向けのワクチンも開発・使用が進んでいます。
※早産などの特定の条件をみたすお子さんのみ保険適応となります。
重症化した場合は?
RSウイルスは軽症で済むことも多いですが、生後半年以内のお子さんや基礎疾患のあるお子さんは重症化リスクが高いです。
細気管支炎、肺炎、中耳炎などの合併症のほか、
・無呼吸発作
・急性脳症
・低酸素血症
など、まれに重篤な症状を引き起こすこともあります。
気になる症状があればお気軽に当院へご相談ください。
よくある質問
RSウイルスの潜伏期間は?
2〜8日(典型的には4〜6日)です。
大人や兄弟から赤ちゃんにうつりますか?
はい。大人は軽症で気づかないことも多いですが、乳児へうつす可能性があります。
ワクチンはありますか?
一般的に広く使えるワクチンはまだありません。ただし、重症化リスクの高い赤ちゃん向けの予防薬や、妊婦さん・高齢者向けのワクチンは存在します。
入院が必要になるのはどんな時?
喘鳴がひどい、ミルクが飲めない、低酸素血症、無呼吸発作などが見られる場合は入院が必要です。
当院へのアクセス
当院は地下鉄東西線「大谷地駅」5番出口直結のビル内にあります。
屋上には20台分の駐車場を完備し、お車でも通院しやすい環境です。
厚別区大谷地をはじめ、清田区・白石区・豊平区・江別市・北広島市など、近隣地域からも多くの患者さまにご来院いただいています。
最後に
RSウイルス感染症は、特に乳幼児にとっては注意が必要な病気ですが、過度に怖がる必要はありません。
重症化する例もありますが、正しい知識を持って予防を心がけ、症状が出たら早めに小児科を受診することが大切です。
「赤ちゃんの咳が気になる」「RSウイルスかもしれない」と不安を感じた際には、どんな些細なことでも構いません。札幌市厚別区の小児科「大谷地のびやか子どもクリニック」へお気軽にご相談ください。